本を耕す -「レイアウトは期日までに」

この前、「レイアウトは期日までに」という本が新大久保を舞台にしているといって紹介したが、その時に新大久保である必然性はなさそう、というようなことを書いた。あらためて読み返すとそんなことはなかったので悔い改め、以下に調査結果を記したい。物語の核心に関わることは書かないつもりだが、本文中の記載には触れていくので気になるようだったらブラウザ・バックしていただき、読んだあとに戻ってきてほしい。


この物語は契約を切られたデザイナー・赤池めぐみと毀誉褒貶(きよほうへん、よめまへん)激しい天才装丁家・桐生青が新大久保に構える事務所を主な舞台として展開する。実は、序盤で赤池が桐生の事務所を訪れる描写だけでその場所がどこにあるのかはかなり高い精度で推測できる。まず桐生から送られてくる住所が、番地はぼかしてあるものの百人町だという記載がある。そして、実際に赤池が桐生宅へ向かう際、「テニスコート」と「保育園」の描写がある。保育園はいくつかあるが、百人町に現実にあるテニスコートは二丁目の「トマステニス」だけだ。よって、事務所はおおまかに百人町二丁目のトマステニス付近だと考えられる。

また、赤池が仕事終わりに犬の散歩に行く際、「大きな病院のある通り」を経由して実在する「東京グローブ座」を通過している。トマステニスを左手に北へ進むと、東京山手メディカルセンターという総合病院のある通りに出る。東京グローブ座はメディカルセンターのちょうど東にあり、さらに北上すると西戸山公園にぶつかる。赤池が、この西戸山公園らしき場所で他の飼い主と交流している様子も見られる。

そして、極めつけが「昔このあたりに大きな映画撮影所があった」という言及である。あまり気にしていなかったが、これは梅屋庄吉が1912年に創立した日本活動写真株式会社(日活)のことだと思われる。日活があったのは百人町2丁目23番地。まさしく先ほどのテニスコートがあった区画である。本編では梅屋庄吉がモデルであろう人物も登場し、物語に大いに関係してくるため、「新大久保が舞台である必然性」はちゃんとあったのである。

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